【日時】2021年7月23日(金)〜25日(日)<2泊3日>
【場所】似島臨海少年自然の家
国立公園で働くレンジャーの使命や活動内容について学ぶ「子どもパークレンジャー」事業のお手伝いをしました.毎年実施している事業ですが,新型コロナウィルス感染症の影響もあり,今年は参加者を16名に絞り少人数で実施しました.活動の様子をメモします.
参加者集合・JPR任命式
7月23日午前9時,参加者16名が広島港に集合。子どもパークレンジャー(以下:JPR)任命式を行った後、フェリーに乗って広島港から似島に渡り、徒歩で会場の似島臨海少年自然の家に向かいました。
はじめの会・国立公園とは?・仲間づくり
似島臨海少年自然の家到着後,室内で環境省レンジャーから開会のあいさつと似島でのJPRの活動に向けて激励をいただきました。その後、オリエンテーションで「似島の海と森のお宝さがし」というテーマ、自然を楽しみ、魅力を伝えるというプログラムの目的、海と森と夜の生き物さがしを中心とした3日間の活動スケジュール、自然と仲間を大切に積極的に活動しようという心構えなどを確認しました。
小休憩の後、アクティブレンジャー(以下ARと略)から、レンジャーの仕事についてのレクチャーがありました。プロジェクターで日本全国に34カ所ある国立公園について紹介し、その中でも一番古く大きい瀬戸内海国立公園の特徴は、環境や生き物が多様で、人の生活と近いことだと教えていただきました。瀬戸内海には砂浜や干潟、藻場、磯、岩場などさまざまな環境があり、代表的な生き物としてスナメリやミヤジマトンボ、タツノオトシゴ、ニホンアワサンゴなどの紹介がありました。
国立公園を守るパークレンジャーの仕事は「みはる」「しらべる」「つくる」「きれいにする」「つたえる」「未来にのこす」の6項目あり、今回のJPRでは似島で「しらべる」と「つたえる」の任務に取り組むことを確認しました。
[ミッション1] 海のお宝さがし
1つめのミッションである海辺の生き物探しの前に、講師から導入の話をしてもらいました。ホワイトボードに海岸の模式図を描き、子どもたちがこれまで海で見つけたことのある生き物やその居場所を聞きながら、護岸の岩、砂浜、牡蠣棚の下の浅い海などに、どんな生き物が見つかりそうか考え、子どもの目線でイメージをふくらませていきました。
海辺では班行動で生き物探しをし、見つけた生き物をバケツに集めていきました。海に流れ込んでいる小さな川の流れには、マメコブシガニやアラムシロガイがたくさん見つかりました。また、牡蠣棚の支柱にはイボニシとその卵がたくさんついていました。海水の中に網を入れて、エビや小魚をすくった子もいました。アマモの中にはイカの卵が見つかり、岩の間に大きなマダラウミウシも見つかりました。
食べられる貝を採集しようと声をかけると、スガイやコシダカガンガラなどの「つぶ」と呼ばれる巻き貝や、イボニシ、ヒザラガイなどをたくさんバケツに集める子もいました。
採集した生き物は施設まで持ち帰り、バットとシャーレを使って種類分けをし、どんな生き物が見つかったかを講師とともに確認しました。
【見つかった生き物】
マメコブシガニ ヒライソガニ ケフサイソガニ オウギガニ マダラウミウシ
ダイダイイソカイメン タテジマイソギンチャク ミドリイソギンチャク
カンザシゴカイのなかま イソテッポウエビ スジエビモドキ ドロメ イカの卵
ミル ツノマタ アナアオサ
イボニシ アカニシ スガイ イシダタミガイ コシダカガンガラ クボガイ
アラムシロガイ タマキビガイ ヒザラガイ ケハダヒザラガイ ウスヒザラガイ
アサリ マガキ カリガネエガイ コウダカアオガイ オオヘビガイ
[ミッション2] 夜のお宝さがし
夜の活動は、海辺の生き物さがしのふりかえりからスタートです。似島の海の「お宝」候補として一番の発見を各グループで発表してもらいました。色が変わるイボニシの卵(新しいのは白く、古いのは紫色)、たくさん獲って味わったスガイやイボニシ、貝殻の裏が青く美しいコウダカアオガイ、形を変えるウミウシ、人面ガニとも言われるマメコブシガニ、卵を抱いたスジエビモドキやイボニシ、イカなどいろんな卵......子ども一人ひとりの印象に残った発見をみんなで共有しました。
その後、夜の生き物探しのイントロダクションをしました。昆虫を集めるライトトラップを設置していること、アカテガニの産卵が見られるかも知れないこと、カニを見つけた時の雄雌の見分け方などを話し、外歩きの目的と視点を伝えて夜の観察にでかけました。
観察では、産卵に来ていると思われるアカテガニやカクベンケイガニなどを数匹見つけましたが、残念ながら産卵する瞬間を見ることはできませんでした。そうするうちに、桟橋壁面の水中に大きなイシガニを発見し、手足を動かして海に泳いでいくところを懐中電灯で照らして観察することができました。
桟橋から移動途中、海岸道路の脇に大きなヒキガエルを発見。講師が手に載せると勢いよくオシッコをして、歓声が上がりました。グラウンドの横では羽化前のアブラゼミの幼虫が歩いているのを見つけ、室内に持ち帰って羽化を観察することにしました。
ライトトラップには残念ながらガやバッタなどの小さな昆虫しか来ていませんでした。横にあった外灯のほうが明るく、セミなどいろんな虫を集めていました。
施設まで帰る途中でヒキガエルをもう1匹発見。このようにヒキガエルが当たり前に見られる環境はとてもめずらしいという講師のお話があり、自然の豊かさを実感しました。講師が数カ所しかけていた糖蜜トラップ付近では、キシタバやシロスジトモエという大きなガが見つかりました。朽ちた切り株では赤いカブトムシのオスが見つかり、子どもから歓声があがりました。
【見つかった生き物】
アカテガニ クロベンケイガニ カクベンケイガニ イソガニ
ヒキガエル ヤモリ
カブトムシ(オス) コクワガタ(メス) オオコクヌスト ミイデラゴミムシ
アブラゼミ幼虫(羽化) ニイニイゼミ シロスジトモエ キシタバのなかま
アツバのなかま ダンゴムシ ムカデ
〈夕方の森〉
ゴマダラチョウ ジャノメチョウ クロコノマチョウ
ナガサキアゲハ アオスジアゲハ
[ミッション3] 森のお宝さがし
2日目の午前中は「森のお宝探し」。道沿いの草むらや低木、カンキツ畑などにいる虫を見つけたり、飛んでくるチョウやトンボに網をふったりして採集を楽しみました。どんな虫でも講師が嬉しそうに解説してくれるので、子どもたちも発見や採集がどんどん楽しくなり活動が盛り上がりました。
ホタル池ではオニヤンマの産卵が見られ、池に網を入れるとタイコウチやオタマジャクシが見つかりました。
室内で休憩した後、グループごとに見つけた生き物をポストイットに書き、種類別に掲示しながら全体でわかちあい、たくさんの発見を共有しました。各自のお宝候補の虫は観察用にキープして、綿で水分を補給し、それ以外の虫は屋外に逃がしました。
【見つかった生き物】
〈チョウのなかま〉アオスジアゲハ クロアゲハ ナガサキアゲハ モンキアゲハ
アゲハの幼虫・さなぎ モンシロチョウ スジグロシロチョウ ヤマトシジミ
ウラギンシジミ ゴマダラチョウ マダラツマキリヨトウ(幼虫) ガのなかま
〈甲虫のなかま〉ハンミョウ キイロトラカミキリ ラミーカミキリ カナブン
ゲンゴロウのなかま コガネムシのなかま(幼虫)
〈セミのなかま〉ニイニイゼミ アブラゼミ クマゼミ セミのぬけがら各種
タイコウチ アメンボ
〈バッタのなかま〉キリギリス ショウリョウバッタ エンマコオロギ
コオロギのなかま クルマバッタ トノサマバッタ ツユムシ バッタのぬけがら
〈トンボのなかま〉オニヤンマ ギンヤンマ(ヤゴ) シオカラトンボ
シオカラトンボ(ヤゴ) オオシオカラトンボ
〈その他の虫〉カマキリ アブのなかま ハエのなかま クロアリ アリのなかま
ハチのなかま カのなかま ラクダムシ
〈昆虫以外の生き物〉ニホントカゲ サワガニ アマガエル オタマジャクシ
カタツムリのなかま ナメクジ コガネグモ ダンゴムシ ヒル ウリボウ(死体)
海と森のお宝探しのまとめ・発表準備①
午後からの最も暑い時間は、室内でまとめの活動。前日からの、海辺と夜と森の生き物探しで発見した生き物リストを書いた模造紙を掲示し、3つの活動をふりかえりました。その中で自分が特に印象に残った生き物を3つ選び、顔文字ドットシール(エモいシール)をポスターに貼りながら全体を眺めてみました。一番人気はヒキガエル、次いでニホントカゲ、ヤモリの順でした。
次に、翌日の発表会で発表するために、自分のイチオシの「お宝」を決めて「お宝紹介シート」を書くミッションについて説明。決めた生き物を観察しながらスケッチをし、図鑑などで調べて、発見した時のようすや観察した気づきなどを含めて、その魅力を紹介する文章を作文していきます。完成した「お宝紹介シート」は,最終日にオンライン配信で保護者に向けて発表することにしました。
[ミッション4] 海辺の漂着物しらべ
ミッション4はマイクロプラスチック調査と海ごみ拾いの活動です。日本自然保護協会の教材「砂浜ノート」を配布し、海辺の漂着物にはどんなものがあるか、海ごみやマイクロプラスチックが海の生き物にどんな影響を与えるか、について大まかに学習しました。教材のデザイン性が高く、分かりやすかったので、子どもたちは興味を持って目を通していました。
また、香川県の「海ごみ大図鑑」を参考に、どんなごみが見つかりそうか予想してもらいました。そして、この後のマイクロプラスチック調査の方法を、沖縄県の調査事例の写真をプロジェクターで示しながら説明。その後、グループで道具を持って前日と同じ海岸に調査に出かけました。
砂浜の汀線付近でマイクロプラスチック調査。ちりとりで25㎝四方、深さ1㎝の砂をすくい、ふるいで5㎜以下のごみを落として、バケツの水に浮いたものを手網ですくい、サンプルを回収します。回収したマイクロプラスチックは室内で分類するために持ち帰りました。
その後、各グループに渡したごみ袋で、海岸のごみ拾いを実施。大きなごみも多く、用意したごみ袋がすぐにいっぱいになりました。拾ったごみは施設まで運んで分類し、施設にごみ処理をお願いしました。
夜の活動の前の時間に、マイクロプラスチック調査で持ち帰ったサンプルを分類する作業をしました。サンプル量が十分でなく、すぐ終わってしまうグループもありましたが、「海ごみ大図鑑」にも載っている肥料カプセルと人工芝破片が見つかったグループもあり、みんなで確認しました。
その後、ARがマイクロプラスチックの問題について簡単に講義。プロジェクターでミヤジマトンボの生息地の海ごみの写真を見せながら、大量の発泡スチロール片に覆われている宮島の海岸の現状を伝えてもらいました。さらに、発泡スチロールは牡蠣筏のフロートとして使われており、他にも牡蠣の養殖に関する海ごみは多いこと。タイヤのゴムのすり切れや、洗顔料のマイクロビーズなど、日常生活からマイクロプラスチックは出ていること。マイクロプラスチックは有毒物質が付着しやすく、それを食べた生き物が別の生き物に食べられることで、食物連鎖を通じて受け渡され、濃縮されてしまうことなど、問題点を紹介しました。マイクロプラスチックを含む海ごみが、どこから来て、どこに行くか、関心を持って自分なりに考えることが大切だと確認して終了しました。
夜の海辺さんぽとレンジャートーク
2日目の夜は、だんだんと暗くなる時間に、海辺まで散歩をして夜の自然を味わう活動をしました。似島小学校前のコンクリート護岸まで歩き、そこで2手に分かれて、海に向かって1人ずつ静かに座って10分ほど自然を味わいました。時折強くなる波の音が聞こえる中、対岸の明かりが水面に映り、満月が出て、流れ星も流れました。静かな時間の後、2班一緒に座り、どんな時間を過ごしたかを1人ずつ静かに紹介、静かな素敵な時間となりました。
その後、全員が集まって座り、インタビュー形式で話を聞くレンジャートークを行いました。中学の時にレンジャーという仕事を知り、その夢を温めながら学生時代を過ごして、ついに夢を叶えたという経緯や、これまで九州や北海道のダイナミックな自然の中で仕事をしてきて、初めて人の生活と近い瀬戸内海国立公園に赴任した際の驚きなどを語ってもらいました。また、今回は「自然」がテーマとなっており、自然の意味について改めて考えてみて、自然公園に訪れるなど自然にアプローチするには、道や看板など人の手による整備が必要になるので、自然と人間活動のバランスが大切だという話を聞きました。
最後にウミホタルを観察。青い光を放つウミホタルを手にのせたり、地面に落ちて青く光るのを見たり、懐中電灯で照らして姿をみたりして、子どもたちはとても喜んでいました。
「似島の自然のお宝」発表準備②・アカテガニ釣り
3日目の活動が始まるまで、昨日の活動をしおりに書いてシールをもらい、各グループのポスターに見つけた生き物の絵を描き込んで完成させました。並行して、乾燥ウミホタルを顕微鏡で拡大して見たり、集めたセミの抜け殻を分類したり、アカテガニ釣りのためにスルメを切ったりして時間をすごしました。
朝一番の活動は、それぞれの自然のお宝を紹介する発表会に向けての最終準備と、その間に交代でアカテガニ釣りをしました。
アカテガニ釣りは2班ずつ交代制で実施。暑さのせいかアカテガニの姿が少なく、カクベンケイやクロベンケイ釣りにもトライしてみました。カニの前にエサを下ろして、ハサミで挟んだところを引き上げるのですが、驚いて穴の中に隠れてしまったり、挟んでもすぐに放してしまったりと、なかなかうまくいきませんでした。
[ミッション5] 私の「似島の自然のお宝」自慢大会
オンラインでの発表会には10組ほどの家族が参加して、子どもたちの発表を聞いてもらいました。最初に3日間の活動のスライドショーを見てもらい、子どもたちの様子を報告してから、各班の発表になりました。グループで作成したポスターを示しながら、グループの様子を話した後、一人ひとりお宝の紹介文を読み上げながら、自分の「自然のお宝」の魅力を発表しました。画面の向こうの家族の姿に多少緊張した様子も見られましたが、しっかり声を出して発表を終えることができたと思います。
閉会行事・保護者へ活動報告
3日間をふりかえって、しおりの最後のページにある子どもパークレンジャーの歌の歌詞をグループで考えてもらいました。見つけた生き物などを3つ選んだり、子どもパークレンジャーはどんなものかを考えたりしながら歌詞を決めました。
グループで決めた歌詞を全体で紹介すると、なるほどというキーワードが次々シェアされました。
【子どもパークレンジャーの歌】
ぼくらは子どもパークレンジャー
レンジャーだから だ
ぼくらは子どもパークレンジャー
レンジャーだから だ
似島の森や海 探検すれば
いろんなお宝 見つかるよ
だって
だって
だーって
みんなみんな 島の宝だ
なんだ(各班で考えた歌詞)
その後、ふりかえりシートを配布して、3日間の活動で印象に残ったことや気づきを各自で書いてもらい、グループで読み合わせてわかちあいました。
最後に、スタッフ全員からひとことずつ最後のメッセージを伝えて、似島での活動を終了。徒歩で似島桟橋まで移動し、フェリで広島港に向かいました。
広島港に到着すると、車で運んだ大きな荷物を受け取り、出迎えの保護者の見守る中、プログラム中の子どもたちの様子を報告しました。子どもたちがいろんな発見をできて、いろんな生き物と出会えたこと。暑い中でとても疲れていると思うが、なんとか最後まで大きな事故もなく過ごせたことを伝えて全日程を終了しました。
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